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イタリアの香り

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イタリアでの滞在を重ねる度に、私の記憶の中に深く刻まれていく香りが2つある。

ひとつは菩提樹の香り。
おととしの5月、ガルダ湖のあるヴェローナの近くの湖水地方で1週間近くヴァカンスを過ごしたホテルの中庭に色濃く漂っていた菩提樹の香りをパリでかいだとき、目の前には透き通った美しいガルダ湖がよみがえる。

湖をそのままプライベートビーチにしていたこの贅沢なホテルの湖に面したテラスで、朝の透明感あふれる光をあびながら飲んだカフェ・ラ・テの美味しさ、コルネットとよばれる中に杏のジャムがたっぷりと入ったイタリアンクロワッサンのやわらかい甘さ、ハーブティーにして飲むことも多い菩提樹の優しい香り、そんな中頭を悩ませることは、今日のドライブの行き先をどこにするか、とびっきりのランチをどこでとるか。。そんなことぐらいのゆるやかな時間。

また菩提樹の香りをかいで思い出すのが、ヴェローナから車でホテルまで帰る道に現るイタリアではかの有名な売春婦たちの姿。
この道は彼女達のテリトリーらしく、1本1本の菩提樹の前に思い思いに自分の官能性をアピールした女性たちがずらっと並び、通り過ぎる車に向かって精一杯の営業スマイルやポーズを浮かべている。
そこを通る車もほとんどがその目的の男性たちらしく、かなり不自然に遅いスピードでたらたらと運転し、自分好みの女性を探している様子。
その女性たちの中には暗闇の中でもはっきり見えるシワが年齢を物語っているようなマミー(フランス語でおばあちゃんという意味)もいたりして、そのマミーの前を通りかかった車は急にスピードを上げて通り過ぎていくという、まるでコメディーのような舞台が繰り広げられている。

私たちは私たちで、泊まっていたプチホテルのオーナーがご高齢のおじいちゃまで、「わしのホテルに泊まるものたちはみな門限を守ってもらう!」と鼻息荒くチェックイン時に言われたため、毎日が思春期の子供のような状態。(ちなみに門限は夜中0時というシンデレラタイムだった。)

ヴェローナで美味しいリストランテで舌づつみをうち、ワインを味わい、食後の散歩をしながら 「あぁ、ここでジュリエットはロミオと恋に落ちたのかしら。。」などと空想しているとあっという間にシンデレラたち(?)は帰る時間。車にいそいそと乗り込み、急げ!っとアクセルを踏み込んだときにぶつかる例のナイトタイム。。
思春期の少年少女状態の私達は「門限、門限!!」と妙にナーバスになっている。
そんなコミックのようなひとときに「まあまあ、そうイライラしないで。。」といわんばかりに車の窓から優しく流れ込んでくるのがシニョーレ達の香水の香りと交じり合って香ってくる菩提樹の香り。。

そんなこんなで菩提樹の香りはパリでいらいらした時の自分の気持ちをそんな思い出達と共にふんわりと和らげてくれる香りなのだ。

そしてもうひとつの香りがスイカズラの香り。
フランス語ではシェーヴル・フォイユ(山羊の葉)という面白い名前がついているこの植物は、この時期かぐわしい香りの小さな白い花々を咲かせる。
香りは限りなくジャスミンに近い甘さを持った香りで、夕暮れが近づくとどんどん香りが強く感じられる夏の長い夜を素敵に彩ってくれる植物。
このスイカズラはヴェネチアのあちこちの小路に、そして運河沿いの古びたパラッツォの壁に天まで届きそうな勢いですくすくと枝をのばして花を咲かせている。

今回泊まった秘密の隠れ家のようなホテルのヴェネチアスタイルの中庭にもこのスイカズラはひっそりと咲いていた。

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夕方歩きつかれてシャワーを浴びた後、桃とプロセッコのカクテル「ベリーニ」を片手にくつろいでいるときも、朝ベッドの中でカフェを寝ぼけたまま飲んでいるときも、絵画のように美しいこの中庭に面したRosa(ローザ)という名の私たちの部屋の窓からこの素敵な香りは忍び込んできて、滞在中、夢のように甘い香りを楽しませくれた。

こんな風に香りと思い出というのは私の中で強く結びついていて、時折忘れかけていたいろいろな記憶を呼び覚ましてくれたりする存在なのだ。
by ochimadoka | 2010-08-30 02:05 | la vie parisienne
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