今回私が一番たくさんの時間を過ごしたのがピアノが置かれているサロンだ。 ピアノのすぐ横は一面小さな窓がダイヤのように組み合わされた森と海を見渡す窓になっていて、いくつかの小さな窓を開けるとそこから気持ちのいい森林の香りがサロンに流れこんでくる。 このサロンは大きな美しい暖炉がある天井の高い開放的な空間だ。部屋の中なのに、どこか森の中にいるようなそんな自然との一体感が感じられるサロン、ここで沢山の美しい時間を過ごした。 何より素敵なのが、私がここでピアノを弾き出すと、そのピアノの音が風に乗って森の中に響き渡るということ。弾いている本人は最初その事実に気づくはずもなく、数日してアントワーヌからそれを告げられた時、何とも言えない感動につつまれた。 私の弾くピアノの音が、花や木々の香り、目の前に広がる海、森に差し込む光と混ざり合って森の中で鳴り響くなんて、なんて素敵なことなんだろう! そのことを知ってからは、妙に神聖な気持ちでピアノに向かうようになった私。 何ていったって、ちょっとしたミスタッチも森中に響き渡るのだから。。! そういえばこんな出来事もあった。 ある午後、画家のベルトランとランチを食べていると、こんな提案をしてきた。 「まどかが弾くピアノの音色を聞きながら、僕がそこからインスピレーションを受けて森の中で絵を描いていくっていうことやってみないかい?」 「あっそれ、面白い!是非やってみましょう!」 ということでその日の午後は、私がサロンでラヴェルやドビュッシーを弾いているのを聞きながら、紫陽花の咲き乱れる森の一角でベルトランが絵を描く、、なんて素敵なことをした一日もあった。 さらに私を感激させたのは、ピアノの練習の手を休めて森を散歩したり、サロン・ド・テでお茶を飲んでいると、すれ違う人たちから「さっきピアノを弾いていたのは貴方かしら? さっき弾いてらしたシューベルト、とっても美しかったわ。どうもありがとう。」とか「ショパンのワルツを聞きながら、この森の散歩を楽しませてもらったよ!」などと暖かい素敵な言葉をたくさんいただいた。中には「ブルターニュ地方でこういう音楽祭をやっているんだけど、良かったらそこでコンサートをしませんか?」という嬉しい提案をしてくださる方もいた。 これぞ私にとっての理想のコンサート! 壮大な自然の中で、音を聞きながら漂う香りを身体中に吸い込んだり、目の前に広がる神々しいまでの自然の姿を見つめたり、森の中でさえずる小鳥の声や教会の鐘の音がドビュッシーの音楽に伴奏を添えたりと、いろいろな美しいものがインスパイアしあって創り出す、身体全体で音楽を感じられる空間。 そういえば2005年にルカ、そしてジュリアナと3人で長崎のお寺でコンサートをした時に、ルカが会場となっていた本堂の外でフルートを吹き、風にのって聞こえてくる音楽をお寺の中の静謐な空気を感じながらお客様は目を閉じて聞くという素敵なプログラムを組んだことを思い出した。 さて次のコンサートではどんな素敵なことが出来るだろうか。。?
by ochimadoka
| 2007-08-22 23:55
| la vie parisienne
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